生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

トマトに多く含まれ、強力な抗酸化作用を発揮

成澤 富雄 著 2003.02.14 発行
ISBN 4-89295-449-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


ガンの発生を抑制する

生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

大腸ガンの発生を抑える
リコピンに関しては、その抗酸化作用が明らかになると、多くの研究や実験が行なわれるようになりました。
私たちの研究グループも、ラットを使った実験でリコピンの発ガン抑制効果を検証しました。
まず、ラットに3週間にわたって大腸ガンを誘発する発ガン物質を投与し、その後、これらのラットを三つのグループに分け35週間、飼育しました。
第1群には飲み水として普通の水道水を、第2群には水道水にトマトから抽出・精製したリコピンを添加したものを、第3群には市販のトマトジュースを水道水で6分の1に薄めたものを用意し、それぞれ自由に摂取できるようにしました。第2群と第3群の飲み水に含まれるリコピンの量は同じ濃度(17ppm)にしてあります。
35週間の飼育後、3群の間では、飼料の摂取量、飲んだ水の量および体重の増加量では差は見られませんでしたが、大腸ガンの発生頻度において明らかな差が認められました。
第1群(対照群)では、24匹のラットのうち13匹に大腸ガンが発生したのに比べ、第2群は24匹中8匹、第3群は24匹中5匹と、発ガンの頻度が低く抑えられています。
この結果から、大腸ガンの発生をリコピンおよびトマトジュースが抑制したことが分かります。また、リコピンのみよりもトマトジュースのほうが抑制効果が高かったのは、トマトジュースにはリコピン以外の成分も含まれているので、それらとの相乗効果のためと考えられます。
引き続き、同じような実験を再度行ないましたが、前回と同様にトマトジュースが大腸ガンの発生を抑制することを確認しました。
しかし、30倍に薄めたトマトジュースでは、抑制効果が現れませんでした。効果を期待するには、それなりの量のリコピンを摂らなければなりませんが、どれくらいの量を私たちが摂取すればよいのかについては第3章で述べます。

その他のガンでも効果を確認
大腸ガンのほかでは、国立がんセンター研究所が行なったマウスでの肝臓ガンの実験があります。この実験では、トマトジュースを飲ませたマウスの肝臓ガンの発生率は飲ませなかったマウスに比べ半減した、という結果が出ています。
また、これらのガン以外にも、ラットやマウスの実験において、肺ガンや乳ガン、膀胱ガン、皮膚ガンなどの発生をリコピンやトマトジュースが抑制した、という報告があります。
このことから、リコピンには、各種のガンを予防する効果があることが分かります。
さらに、アメリカの研究で、前立腺ガンの患者にリコピンを内服させたところ、前立腺ガンの成長が抑制された、という報告もあります。
前立腺ガンの患者15人に手術前の3週間、リコピン15ミリグラムを1日2回内服投与したところ、血液中に出現するPSA(前立腺特異抗原:前立腺ガンの検診に利用されている)の測定値が減少し、リコピンを投与しなかった患者11人では増加していました。
 そして手術で切除した組織の検査で、リコピン投与例ではガン細胞の増殖が抑制されている所見が得られたといいます。
こうした結果は、ガンの予防だけでなく、治療の面でもリコピンの効果を期待させる内容といえます。
リコピンの他の効能も含め、さらなる研究が待たれているところです。


実験に使った市販のトマトジュースの成分(100g当たり)

カロリー16kcal
タンパク質0.7g
脂質0.1g
糖質4.0g
繊維0.1g
灰分0.5g
ビタミンC9.0mg
ビタミンE0.3mg
β−カロチン0.2mg
リコピン10.0mg
ルテイン0.04mg


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