生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

トマトに多く含まれ、強力な抗酸化作用を発揮

成澤 富雄 著 2003.02.14 発行
ISBN 4-89295-449-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


動脈硬化の予防に役立つ

生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

動脈硬化の引き金は活性酸素
動脈硬化は中高年世代に多く見られる病変ですが、この動脈硬化の怖いところは、自覚症状がないために知らぬ間に病変が進行し、遂にはさまざまな病気を引き起こす原因となることです。
最近では、活性酸素がこうした動脈硬化の発症に深く関わっていることが知られています。
活性酸素により血管内壁の内皮細胞が損傷を受けると、その箇所から血液中の悪玉コレステロールとも呼ばれるLDL(低密度リポたんぱく)コレステロールが血管壁内部に入り込みます。すると、このLDLコレステロールは活性酸素により酸化され、酸化LDLコレステロールへと変化します。
細菌などの異物を取り込んで排除する白血球の一種であるマクロファージ(食細胞)は、この酸化LDLコレステロールを異物と認識し、自分の中に次々と取り込んでいきます。
その結果、多量の酸化LDLコレステロールが血管壁に蓄積、その部分が硬く肥厚し、血管の内腔は狭くなってきます。
狭くなった血管のところでは、血液がスムーズに流れず、血管内壁が傷つきやすくなります。そして、この傷を修復しようと血栓がつくられることになります。そのため、血管の内腔はさらに狭まります。
こうした悪循環が繰り返されることにより、動脈硬化の症状が促進されていくことになるのです。

LDLコレステロールの酸化を抑制
このように、動脈硬化が進行するうえで、LDLコレステロールの酸化は大きな要因となっています。
しかし、抗酸化作用を持つリコピンは、このLDLコレステロールの酸化を抑制し、酸化LDLコレステロールの生成を抑えることで、動脈硬化の進行を妨げて予防効果を発揮します。
次頁のグラフは、β―カロチンとリコピンの抗酸化作用を示したものです。血液の液状成分である血漿が入っている試験管内で活性酸素を発生させ、過酸化脂質(酸化LDLコレステロールもその一種)の生成量を測定しています。
血漿中のβ―カロチンやリコピンが、過酸化脂質の生成を抑制していることがよく分かる結果となっています。

脳梗塞や心筋梗塞を防ぐ
ガンに次いで日本人の死亡数の多い脳血管疾患と心疾患、その中の脳梗塞や心筋梗塞は動脈硬化が原因となって起こります。
すでに述べたように、リコピンには動脈硬化を予防する働きがあるので、リコピンの摂取はまた脳梗塞や心筋梗塞の予防へとつながります。
ガンやこれらの疾患に苦しめられない健やかな生活を送るためにも、リコピンの積極的な摂取を毎日、心がけることは賢明な方策といえるでしょう。


血漿中のカロチノイドと過酸化脂質


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