生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

トマトに多く含まれ、強力な抗酸化作用を発揮

成澤 富雄 著 2003.02.14 発行
ISBN 4-89295-449-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


トマトに含まれているリコピン

生活習慣病を予防するトマトの“リコピン”

トマトは栄養価が高い
世界中の人々に愛されているトマトですが、ヨーロッパのことわざに「トマトが赤くなると医者が青くなる」とあるように、非常に栄養価の高い野菜として利用されてきました。
トマトはナス科トマト属の一年草で、ナスをはじめピーマンやジャガイモ、タバコ、ホオズキなどとは同じ仲間の植物です。
左頁の表は、生食用トマト100グラム当たりに含まれる主な栄養成分の種類と量をまとめたものです。トマトが、いろいろなビタミンやミネラルをバランスよく含んでいることが分かります。さらに食物線維も含んでいます。
このようにトマトは、私たちの体にとって大切な栄養素が豊富な野菜だからこそ、先ほどのようなことわざが生まれてきたのでしょう。
まさに、トマトは健康食野菜の代表格といえます。

リコピンを含むのはトマトだけ
トマトは、非常に栄養価の高い緑黄色野菜の一つですが、他の緑黄色野菜と決定的に異なっているのは、リコピンを含んでいることです。
リコピンはトマト100グラム中に約3ミリグラム含まれています。
リコピンは、β―カロチンやα―カロチンと同じ仲間のカロチンで、このリコピンを含んでいるのは、緑黄色野菜ではトマトだけです。トマト以外では、スイカや柿、ピンクのグレープフルーツなどに含まれています。
トマトの学名はリコペルシコン・エスクレンタム・ミル(Lycopersicon esculentum Mill)といいますが、リコピンという名はこの学名をもとにして付けられました。このことからも分かるように、リコピンはトマトから発見されたカロチンです。

長い間研究されなかったリコピン
リコピンは、すでに述べたようにβ―カロチンと同じ仲間のカロチンです。しかし、β―カロチンとは異なり、体内でビタミンAに変換することはありません。
そのため、リコピンは栄養学的な面からはほとんど注目されず、最近までは研究されてきませんでした。
以前にはトマト自体が注目されていました。第二次世界大戦終結の数年後のこと、アメリカの調査団がギリシャのクレタ島に入ったことがあります。クレタ島の住民にはガンや心筋梗塞などの生活習慣病が少なく、そして長寿者が多かったのですが、その大きな要因は食生活であることを調査団は発見しました。
クレタ島の住民の食生活は、トマトをはじめとする新鮮な野菜、果物、魚介類、オリーブ油を中心としたものでした。
のちに「地中海式食事」と名づけられる、この健康的な食生活に欠かせないものとしてトマトは注目を集めましたが、前述の理由によりリコピンそのものは脚光を浴びませんでした。
カロチノイドの中で研究対象の中心となったのは、栄養学上重要な物質であるβ―カロチンでした。しかし、色素としてのβ―カロチンそのものにガン予防効果のあることが研究で分かると、その他のカロチンにも目が向けられるようになり、リコピンもまた研究の対象となりました。
その結果、リコピンにはβ―カロチンを上回るほどのガン予防効果のあることが判明し、一躍注目を集め始めるようになったのです。


生食用トマトの栄養成分(100g当たり)

エネルギー19kcal
タンパク質0.7g
脂質0.1g
糖質4.7g
繊維1.0g
カルシウム7.0mg
リン26mg
0.2mg
ナトリウム3.0mg
カリウム210mg
β−カロチン540μg
ビタミンB0.05mg
ビタミンB0.02mg
ナイアシン0.7mg
ビタミンC15mg
ビタミンE0.9mg
「五訂日本食品標準成分表」(2001)より


リコピンとβ−カロチンの化学構造式


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