日々の食卓に上る野菜や果物。そのほとんどにカロチノイドは含まれています。カロチノイドというと、ちょっと耳慣れない感じがするかも知れませんが、実は身近にあって、ほとんど毎日といってもいいくらいに、私たちは体に摂り入れているのです。
カロチノイドの代表選手といえば、β(ベータ)‐カロチンでしょう。こちらのほうなら、ご存知の方も多いことと思います。β‐カロチンはビタミンAの供給源としては最も効率の良いカロチノイドであることから、一時は、ブームとなるほどに脚光を浴びたものです。
しかし、そのブームも落ち着くと、β‐カロチン以外のカロチノイドへも関心が向けられるようになりました。たとえば、α(アルファ)‐カロチンやルテイン、リコピン、アスタキサンチンといった、カロチノイドです。
私は、これらのカロチノイドについて研究や実験を積み重ねていくうちに、確かな手応えを感じるようになりました。ひょっとしたら、β‐カロチン同様の、あるいはそれ以上の効能が期待できるのではないか、と。そしてそれは、まさに現実のものとなりつつあります。
それぞれのカロチノイドの特性が明らかになるにつれて、単なる栄養素としてだけでは位置づけられないことがわかってきたのです。
依然として、日本人の死因のトップを行くガン。それに続く脳卒中や心筋梗塞などの血管障害。さらには糖尿病といった、いわば生活習慣病全般に対して、カロチノイドがさまざまな効力を発揮することが解明されてきたからです。
カロチノイドに関する研究は海外、とくにアメリカで積極的に行なわれてきました。そのアメリカでいま、全国的に蔓延している疾病があります。「黄斑変性症」といわれる眼病です。六五歳以上の四人に一人が罹患しているといわれる、この眼病の原因については解明途上ですが、その予防や治療においてカロチノイドが切り札になるのではないかと目され、研究が続けられています。
黄斑変性症は、日本でも徐々に広がりを見せつつあります。大きな社会問題となる日が遠からずやってくるかも知れません。その予防のためにも、また、他の生活習慣病から身を守るためにも、カロチノイドの特性や機能、効能について、ぜひとも知っておいていただきたいと思います。