
体内から見つかったカロチノイド
一九九〇年代初頭にアメリカの農務省が行なったカロチノイドに関する調査報告があります。これは人間の血液や母乳の中に、どんなカロチノイドが存在するかを調べたものです。
調査の対象となった人々は、いずれも緑黄色野菜や果物から多種類のカロチノイドを摂取していたのですが、検出されたのは、十数種類のカロチノイドだけでした。
食物の中には数十種類のカロチノイドが含まれているのに、なぜこれらのカロチノイドだけが吸収され、体内に残っているのか。そうした疑問を解き明かすべく、研究はさらに続けられました。
各器官に蓄積されて役割を分担
その結果、血液中などのカロチノイドは、体内の各器官に運ばれ“蓄積”されていたことが判明したのです。
検出結果からは、大部分のカロチノイドが各器官にまんべんなく分布していることがわかりました。
しかし、その量はある器官には大量に、また、ある器官には微量に、というように均等ではありませんでした。
さらにアンヒドロルテイン、リコピン代謝物などは肝臓のみに蓄積されているという偏りようです。
これは何を意味しているのでしょうか。考えられることは、それぞれのカロチノイドが各器官の機能を正常に保つ上で、何らかの役割分担を任されているのではないか、ということです。
血液および母乳中のカロチノイド
カロチノイド | |
大 量 | ルテイン リコピン β−カロチン α−カロチン |
中 程 度 | ゼアキサンチン ζ−カロチン フィトフルエン フィトエン β−クリプトキサンチン α−クリプトキサンチン |
少量 | アンヒドロルテイン γ−カロチン ノイロスポレン |
活性酸素から細胞を守る
アメリカの農務省は、血液中に存在するカロチノイドの酸化物についても調査をしています。その結果、ルテイン、ゼアキサンチン、リコピンの酸化物が見つかりました。
先にも述べましたが、人間は体内に取り入れた酸素を利用して、食物をエネルギーに変換していますが、その過程で活性酸素が発生します。活性酸素は正常な細胞を酸化させて害を与え、ガンをはじめとする生活習慣病などを引き起こす要因とされています。
このとき、細胞が酸化される前に、自らが酸化されて、細胞が傷つくのを防ぐ役割を担っているのがカロチノイドなのです。多くのカロチノイドの中で、ルテインなどの酸化物が発見されたということは、これらが細胞の酸化を防ぐ、つまり、「抗酸化作用」をもっているということになります。
体内でカロチノイドはどう変化するか
左頁の図は、カロチノイドが体内に吸収されたあと、どう変化を遂げるかを示したものです。
一時、ブームとなったβ‐カロチンは、確かにビタミンAの供給に優れています。しかし、抗酸化作用という点においては、リコピンやルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチンの方がはるかに強いというのが、いまでは定説となっています。
そして、これら以外のカロチノイドも、それぞれの役目に応じて、私たちの健康維持、疾病の予防に寄与しているということが、明らかになりつつあるのです。
