抗糖化・糖尿病対策に包接R−α−リポ酸

糖代謝を促進するR体α−リポ酸の包接化で効果アップ

寺尾 啓二・中野 正人 共著 2010.12.12 発行
ISBN 978-4-89295-811-3 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


血糖値の上昇を抑制する

抗糖化・糖尿病対策に包接R−α−リポ酸

2型糖尿病は生活習慣病
糖尿病の患者および予備軍の数は、年々増加傾向にあります。二〇〇七年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)では、「糖尿病が強く疑われる人」八九〇万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」一三二〇万人、合計二二一〇万人という数字が示されています。
糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が正常な範囲を超えて高くなる病気であり、いくつかのタイプに分けられます。それらのうち、日本の糖尿病患者に多くみられるのは、2型糖尿病です。
このタイプは、膵臓からのインスリンというホルモンの分泌量の減少、あるいはインスリンそのものの働きの悪化などにより、本来ならエネルギー源として利用されるはずのブドウ糖が細胞などにうまく取り込まれず、血液中に残留し続けるという「糖代謝の異常」が血糖値の上昇を引き起こすものです。
こうしたインスリンの分泌量の減少や働きの悪化には、過食や肥満、ストレス、運動不足などの生活習慣が深く関与していることから、2型糖尿病は生活習慣病の一つに数えられています。

放置すると合併症の危険が増大
糖尿病が怖いのは、初期の頃にはほとんど自覚症状がないのですが、のどの渇き、多尿・頻尿、手足のしびれ、体重の減少、倦怠感、下腹部や肌のかゆみなどの症状に気づいたときには、ある程度病状が進行しているという点です。
さらに、糖尿病をそのまま放置しておくと、全身の血管や神経などに徐々に障害を与え、別のさまざまな病気、いわゆる合併症の発症の危険を高めます。
実は、この合併症こそが糖尿病の真の恐ろしさであり、これには「糖化」も関与しています。

糖尿病の合併症は、体のいろいろなところに現われてきます。その中でもよく知られているのは、三大合併症と呼ばれる糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症です。詳しくは後で述べますが、これらの合併症が重篤化すると足の切断、失明、人工透析といった極めて深刻な事態を招きかねません。
糖尿病の進行を止め、合併症を防ぐには、血糖値をコントロールして、その上昇を抑制するようにしなければなりません。2型糖尿病の場合には、まず食事療法と運動療法が行なわれ、それでも効果がないときには薬物療法が用いられます。

R(+)―α―リポ酸が糖代謝を促進
α―リポ酸は、ヨーロッパで糖尿病治療薬として、二〇年以上前から使用されています。
また、現在ではサプリメントとしても利用されているわけですが、前にも述べたように、これまで医薬品やサプリメントに使用されてきたα―リポ酸はラセミ体と呼ばれるもので、R(+)―α―リポ酸(R体)とS(−)―α―リポ酸(S体)を等量ずつ含む物質です。
このR体とS体は、次頁の図に示す通り、実は体内で相反する働きをしています。R体がピルビン酸からのアセチルCoA生成に関与するピルビン酸脱水素酵素(PDH)の活性を増大させることで、糖代謝を高めるのに対して、S体はその逆に働きます。
糖代謝の促進は、血糖値の上昇抑制や糖化反応の低減につながります。したがって、R体つまりR(+)―α―リポ酸は、従来のラセミ体に比べ糖尿病における血糖値のコントロール、さらにはさまざまな合併症の予防、治療においてより有効と考えられます。
ここで、R体とS体とでは逆の働きなら、ラセミ体は果たして効果があるのかという疑問が浮かびますが、結論からいえば、ラセミ体にも多少の効果はあると考えられます。それは、R体がS体よりも体に吸収されやすい性質のため、R体とS体を同量ずつ摂取しても、R体の働きのほうが勝ることになるからです。

α−リポ酸のR体とS体で異なる作用 α−リポ酸のR体とS体で異なる作用

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