
ベータカロチンを上回るパワー
アスタキサンチンの摂取は、がん対策にも大いに役立ちます。実際に、宮崎大学農学部の富田純史助教授の動物実験では、次のような成果が得られています。
がん細胞を植え付けたネズミを二つのグループに分けて、一方にはアスタキサンチンを与え、もう一方にはアスタキサンチンを与えずに飼育します。
そして、各グループのネズミに、新たながん細胞を別の部位に植え付けたところ、アスタキサンチンを与えなかったグループでは、新たに植え付けたがん細胞が日を追うごとにどんどん増殖したのに対して、アスタキサンチンを与えたグループは、それが見事に抑えられたといいます( 図)。
また、がん細胞の成長を抑えるアスタキサンチンの力は、同じカロチノイドの仲間であるベータカロチンを上回ることも、同研究では示されています(表)。
カロチノイドの種類によるガン免疫能を高める力の比較
がん細胞の成長(mm2) | ||
マウスのグループ | 4日後 | 8日後 |
腫瘍を植えただけのグループ | 49.1 | 102.2 |
腫瘍+ベータカロチン | 31.5 | 70.7 |
腫瘍+ゼアキサンチン | 34.8 | 76.8 |
腫瘍+アスタキサンチン | 34.9 | 51.5 |
ストレス性のがんの転移も阻止
一方、がんの危険因子として、最近はストレスが注目されています。というのも、ストレスは、体の中に大量の活性酸素を生み出し、がんの発生や増殖、転移を強力に推し進めるからです。
そこで著者は、サントリー鰍フ研究所と共同で、ストレスによって増長するがんの転移が、アスタキサンチンの投与でどこまで抑えられるかを、次のような実験で調べてみました。
実験では、まずネズミを三つのグループに分けて、それぞれ以下の状態で二〇時間飼育しました。
@ストレスなし
Aストレス(二〇時間狭いカゴに拘束) を負荷
Bアスタキサンチンを投与しながら、Aと同じストレスを負荷
その後、三つの群のすべてのネズミにがん細胞(P815肥満細胞腫)を植え付け、二週間飼育した後、肝臓に転移したがん細胞の数を比較しました。
結果は、図のとおりです。
ストレスを与えなかった@群のネズミに比べて、ストレスを負荷したA群のネズミは、がん細胞の転移数が410%と統計的に有意に促進しました。ところがアスタキサンチンを投与しながらストレスを負荷したB群のネズミは、がん細胞の転移数が約六三%の増加にとどまったのです。
アスタキサンチンが有効ながん
このほか、肺腫瘍、皮膚がん、神経芽細胞腫の増殖に対しても、アスタキサンチンが抑制効果を発揮することが、京都府立医科大学の西野輔翼教授らの研究で明らかにされています。
また、岐阜大学医学部の動物実験では発がん物質による膀胱がんの発生が、アスタキサンチンの投与で抑えられたと報告されています。
さらに、アスタキサンチンの八ヵ月間の投与で結腸がんのリスクが半減したとか、口腔がん、肝臓がん、乳がんなどに対する有効性も示されています。