美肌、目と脳を守るアスタキサンチン

活性酸素の害に対抗する海からの贈り物

矢澤 一良 著 2005.08.09 発行
ISBN 978-4-89295-604-X C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


予防医学の条件をクリアした好素材

美肌、目と脳を守るアスタキサンチン

私たち日本人は、世界に冠たる魚食民族です。四方を海に囲まれた地の利を生かし、昔からさまざまな種類の近海魚を食し、また近年は、地球の裏側でとれる魚介類まで、気軽に口にできるようになりました。
そうした海産物を好む食生活が、日本人の知能の発達や、健康増進に大いに役立ってきたことは、私の主要な研究テーマである「魚油(EPA、DHA)」について著した本でも繰り返し述べてきたことです。
しかし、魚食の有効性は、なにも魚油に限ったものではありません。

そもそも海は、私たち人類を含めた地球上の生物すべてのふるさとであり、母体ですから、海産物は、いってみればその母なる海が、陸上へ旅立っていった子供たちに、いまなお送り届けてくれる愛(栄養)に満ちた贈り物といっていいかもしれません。
そうした海産物から、また新たな有効成分が見つかりました。それが今回、本書で紹介するアスタキサンチンです。
アスタキサンチンは、天然色素カロテノイド類の一種で、サケやエビ・カニなどの赤橙色を生み出している成分です。

カロテノイドといえば、緑黄色野菜に多いベータカロテンが有名ですが、もともとベータカロテンが脚光を浴びた背景には、有毒物質である「活性酸素」の害が社会問題として浮上してきたことにあります。
活性酸素の具体的な毒性は本文で述べますが、がんをはじめ、生活習慣病、慢性疾患、ひいては老化、認知症(痴呆症)など、あらゆる病気の発生に、活性酸素が深く関わっていることが知られています。そこで、体内で発生した活性酸素をすみやかに消去する、いわゆる抗酸化作用をもつ成分が「第7の栄養素」としてクローズアップされてきました。その代表が、ベータカロテンであり、ビタミンEです。

じつはアスタキサンチンのパワーは、それらの抗酸化力をはるかにしのぎます。アスタキサンチンには、ベータカロテンの40倍、ビタミンEの500〜1000倍もの抗酸化パワーが秘められているのです。
日本では、魚のなかでもことにサケが好まれ、魚ばなれが深刻な子供たちでさえ、おにぎりの具やふりかけなど、さまざまな形で、サケを頻繁に口にしています。しかも、同じサケでも、赤い色が濃いものほど人気があります。赤みが強いということは、アスタキサンチンが豊富な証拠。日本人は無意識にアスタキサンチンの多いサケを選んで食べてきたわけです。本能のなせるわざでしょうか。

いずれにしても、日本の医療は現在、これまでの「治療主体」から「予防主体」へと転換しつつあります。そのため、「予防医学」に役立つ天然素材の研究が活発に進められています。

予防医学の素材としては、@歴史的に食経験があるもの、A安全性と有効性が科学的に立証されているもの、B効果のメカニズムが明確なもの、この3点を満たしているものが望まれますが、アスタキサンチンは、EPA・DHA同様、それらすべてをクリアしている理想的な成分です。

本書が、今後の高齢化社会の一助となることを願っています。


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