活性酸素に攻め勝つアスタキサンチン

がん、心臓病、脳梗塞、糖尿病から美肌づくりまで

板倉 弘重 著 2001.09.19 発行
ISBN 4-89295-410-1 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


現代病克服のキーワードは「攻めの栄養学」

活性酸素に攻め勝つアスタキサンチン

私たち現代人は、いま自らの体内で随時生み出されている「活性酸素」という毒性の強い酸素の脅威におびやかされています。
活性酸素の恐ろしさは本文で詳しく説明しますが、ここ二〇年ほどの間に日本で急増した生活習慣病、すなわち各種がんをはじめ、心臓病、脳卒中、高血圧、高脂血症、糖尿病、アレルギー性疾患、アルツハイマー病などは、すべてこの活性酸素がらみで発生するともいわれており、まさに万病の元といった様相を呈しています。

しかし、私たちはこの恐ろしい活性酸素から逃れることができません。食事でとった栄養素をエネルギーに変えるたびに必ず体内で活性酸素が発生しますし、そもそも活性酸素は健康を保つうえで欠かせない物質でもあるからです。もしも体のなかで活性酸素がまったく作られなくなると、病原菌に対する抵抗力を失い、別の側面から健康が損なわれてしまうのです。

人類は長い歴史のなかで、この凶悪な酸素とうまく折り合いをつけながら生きてきたわけですが、ここにきて互いの関係に異変が生じてきました。文明の発達にともなって活性酸素の発生源が激増し、体がそれに対応できなくなってきたのです。

例えば、オゾン層の破壊で威力を増した太陽の紫外線、あるいは車の排気ガスや化学工場の排煙、さらには大気汚染の結果としてもたらされる酸性雨のほか、パソコンや携帯電話の電磁波、環境ホルモン、抗がん剤、食品中の防腐剤や残留農薬など、ひと昔前まで存在しなかったこれらの要素は、すべて活性酸素の発生を促します。また、現代社会では避けられないストレスも、体のなかに多量の活性酸素を生み出すことが分かっています。
活性酸素の発生を止められない以上、打つべき手段はただ一つ。活性酸素に対する体の抵抗力(抗酸化力)を高めるほかありません。

そこで重要なカギを握るのが、毎日の食事です。食品に含まれる成分のなかには、体の抗酸化力を高めたり、体内で発生した活性酸素をすみやかに取りのぞく働きをもつものがあります。ビタミンEはその代表ですが、実は最近の研究でビタミンEの100〜1000倍もの抗酸化力をもつ食品成分が発見されました。それが、サケなどの魚介類に豊富に含まれるアスタキサンチン(カロチノイド色素の一種)です。
活性酸素が万病の元であるなら、その活性酸素を強力に阻止するアスタキサンチンの効用は測り知れません。アスタキサンチンの研究は始まったばかりですが、すでに本文で紹介したように各種疾患に対する有効性が続々と示されています。また、動物実験では、アスタキサンチンの投与で寿命が37%も延びることが実証されています。

従来の栄養学は、生命を維持するために必要な栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)を、毎日の食生活のなかで不足しないように補うことを基本としてきました。各栄養素ごとに定められた「栄養所要量」(一日の摂取量の基準)は、まさに欠乏症を起こさないための最低量を示したものです。
しかし、活性酸素のような悪玉因子の弊害が深刻となっている現在、最低量さえクリアしていればいいという「守りの栄養学」では、生命は維持できても、健康を守ることは難しいと思われます。病気を撃退し、高い健康レベルを維持するには、抗酸化成分のような体の機能向上に役立つ栄養素を栄養所要量の枠を越えて積極的にとっていく「攻めの栄養学」に切り替えていく必要があります。
アスタキサンチンは、そうした攻めの栄養学の重要な要素の一つとして、大変価値あるものといえるでしょう。


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