各種ビタミンのはたらき

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用

吉田 勉 著 1996.12.23 改訂版 2003.03.12 発行
ISBN 4-89295-435-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


骨を強くするビタミンD

骨を強くするビタミンD

人間の体内でも合成できる
ビタミンDは、D2〜D7まであります。このうち最もD作用が高いのがD2とD3で、D2は植物性食品に、D3は動物性食品に含まれています。人体内での両者の効力はほぼ同じくらいです。食物中のD2とD3は、肝臓と腎臓で“活性型”に変えられてから人体内で使われます。
3のほうは、私たち人間の体内でも作られています。まずD3の前駆体であるプロビタミンD 3が肝臓で作られ、これが皮膚で日光(紫外線)の照射を受けてビタミンD3に変化し、それをさらに肝臓と腎臓で活性化して体内で利用しているのです。

基本的な働き/骨を丈夫に保つ
ビタミンDは、骨を作るカルシウムとリンの代謝に必要なビタミンです。
骨というのは常に再構築を繰り返していて、血中のカルシウムやリンを沈着して新しい骨を作る一方で、骨の中のカルシウムやリンの一部を血液中に溶出しています。骨を丈夫に保つには、この沈着と溶出のバランスがとれていなければなりません。
ビタミンDは、まず第一に食事でとったカルシウムとリンを小腸から吸収するときにそれを助ける働きがあります。そして第二に、カルシウムとリンが骨に沈着するのに先立って、骨からそれらを溶出するために大切な働きをしています。さらに、腎尿細管でのカルシウムとリンの再吸収にも関わっています。
カルシウムとリンを体内で効率よく利用し、骨の石灰化を促進するのに、ビタミンDが不可欠なのです。

欠乏症/くる病、骨軟化症
ビタミンDが欠乏すると、骨のカルシウム代謝が悪くなって、子供ではくる病(関節部の肥大、骨の湾曲などが起こる病気)、成人では骨軟化症が起こります。

上手な取り方/日光浴も大切
ビタミンDの栄養所要量は、成人で100IU(2.5μg)です。子供の骨の成長に必須なので、五才以下の子供の所要量は400IU(10μg)、妊婦・授乳婦では200IU(5μg)とされています。
植物由来のビタミンDの補給源は、主にシイタケ類にかぎられます。天日干しの干しシイタケはD2の宝庫です。ただし、電気乾燥させた干しシイタケを食べてもD作用は得られません。というのも、シイタケ自体に含まれるのはビタミンD2の前駆体(プロビタミンD2)で、これを食べても人体内でD2に変えることができないからです。
私たちの体の中では、日差しの強い夏は1日260IU(6.5μg)〜720IU(18μg)、冬は150〜400IU程度のビタミンD3が合成されています。つまり、所要量は十分に自給自足できる計算になりますが、屋内での生活時間が長い人や、日光に恵まれない地域に住んでいる人、UVカット化粧の人などは、食事からの補給を心がけないと不足しがちです。
特に、閉経後の女性は骨が弱りやすいので、ビタミンDの補給と日光浴は不可欠です。

過剰症/活性型ビタミンD剤に注意
ビタミンDの過剰症は、主に活性型ビタミンD剤の取りすぎで起こります。所要量の二百倍以上で、嘔吐、食欲不振、腎臓障害などが起きます。成人の許容上限摂取量は2000IU(50μg)です。ビタミンD剤は、腎臓障害や骨粗鬆症の治療に使われていますが、必ず医師の指導のもとで利用するのが原則です。


ビタミンDを含む食品(μg/100g当たり)
《魚類》《キノコ類》
しらす干し46乾シイタケ17
イクラ44ほんしめじ4
かわはぎ43まつたけ4
くろかじき38まいたけ3
からすみ33生シイタケ2
しろさけ32エリンギ2
にしん22
さんま19
くろまぐろ脂身18
うなぎ18
煮干し18
こい14
まがれい13
にじます11
ぼら10
まいわし10
ぶり8
ビタミンD1μgを40倍するとIUとなります。


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