各種ビタミンのはたらき

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用

吉田 勉 著 1996.12.23 改訂版 2003.03.12 発行
ISBN 4-89295-435-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


ガン予防に有効なビタミンA、C、E

ガン予防に有効なビタミンA、C、E

ビタミンAが細胞の変性を抑える
ビタミンA欠乏時に生じる上皮細胞の変化(角質化)は、発ガン初期にみられる細胞異常(前ガン病変)とよく似ています。また、培養した動物の組織に発ガン物質を添加すると腫瘍が形成されますが、その腫瘍形成の初期段階でビタミンAを添加すると正常にもどることが知られています。
こうしたことから、上皮細胞を正常に保つビタミンAにはガンの予防効果が期待されています。実際に、ビタミンA欠乏食の動物は発ガン物質の投与で腫瘍の発生が高まりますが、ビタミンAを多量に与えた動物では、多くの場合、発ガンが抑制されることが確認されています。
ただし、ビタミンAの制ガン性を否定するデータが一部あるのも事実です。

ビタミンCは発ガン物質の生成を防ぐ
ビタミンCは、体の中でニトロソ化合物という発ガン物質が作られるのを阻止する働きがあります。ニトロソ化合物は、亜硝酸塩とアミンが反応することで生成されますが、ビタミンCには亜硝酸塩を別の物質に変えて、アミンと反応できなくする作用があるのです。
ビタミンCはこのほか、抗ウィルス作用や免疫増強作用もあるので、発ガン予防には最適です。しかし動物実験では、Cの投与で発ガンが促進したデータもあります。

βカロテン、C、Eの相乗効果
発ガンの原因として、近ごろは体内で発生する活性酸素の関与が注目されています。これが体内にたくさん発生すると、細胞内の遺伝物質(DNA)を障害して発ガンを促すと考えられています。
この活性酸素の弊害を抑える“天然の抗酸化剤”として働くのが、βカロテン、ビタミンC、ビタミンEの三種のビタミンです。脂溶性のβカロテンとビタミンEは体内の脂質層(細胞膜など)で働き、水溶性のビタミンCは体液中(血液中など)で効果を発揮します。これらはどれも自らが酸化(活性酸素と結びつくこと)されることで、活性酸素を消去していきますが、ビタミンCが体内に十分あると、酸化されたビタミンEを元のビタミンEにもどすリサイクル効果(還元作用)も得られます。
 もっとも、βカロテンを多量にとると、かえって発ガンが増えるという報告もあります。また、前記のようにCにも発ガン促進が示され、Eも、むやみにとって良いものではないので、どういう条件ならこの三種の相乗効果が適切に発揮されるのかは、これからの研究課題です。


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