各種ビタミンのはたらき

必要不可欠な“潤滑油”ビタミンの栄養的生理作用

吉田 勉 著 1996.12.23 改訂版 2003.03.12 発行
ISBN 4-89295-435-7 C2177 文庫サイズ 48ページ 本体 250円(税抜)


動脈硬化の抑制にはCとEが有効

動脈硬化の抑制にはCとEが有効

ビタミンEがLDLの変性を防ぐ
動脈硬化とは、動脈の弾力が失われて硬くなる状態です。老化現象の一種ですが、何らかの原因で急速に進行すると、虚血性心疾患や脳卒中など生命をあやぶむ病気の発生につながります。
動脈硬化を促す原因の一つが、高脂血症です。高脂血症とは、血中にコレステロールや中性脂肪が増えた状態その他で、特に酸化したLDLコレステロール(悪玉)が血中に増えると動脈の内壁にどんどん蓄積して、動脈硬化が急速に進行します。
こうしたLDLの酸化防止に有効なのがビタミンEです。ビタミンEは、LDL内で脂質の酸化防止に働きます。
アメリカの疫学調査では、毎日100r以上のビタミンEをとっている人は、30r未満の摂取量の人に比べて心臓病の危険率が36%も低いことが明らかになっています。また、血液中のビタミンEが少ない人は、狭心症の危険率が高いというイギリスの報告もあります。

ビタミンCは血管壁を丈夫にする
一方、血中で抗酸化作用を発揮し、LDLの酸化を外から防ぐのがビタミンCです。ビタミンCが血中にたくさんあるとビタミンEの消耗を防ぐうえでも有効です。
また、血管壁に傷ができると、そこに血中成分が付着して動脈硬化の進行を促しますが、この予防にビタミンCが役立つようです。Cの作用でコラーゲン合成が高まると、血管壁が丈夫になって傷ができにくいほか、傷の治りも早くなるというのです。

ナイアシンの投与で血中脂質が減った
ナイアシンにも高脂血症を改善する働きが報告されています。ナイアシン(ニコチン酸)を毎日1.5〜3gずつとってもらったところ、血中の中性脂肪とコレステロールが低下し、心筋梗塞の再発が減ったというのです。なお、この研究では顔が紅潮する副作用が認められています。

ビタミンの効果を否定するデータも
ところで、次のような研究報告もあります。過去に狭心症や心筋梗塞などの冠動脈性心疾患(CDH)があると診断された人たちの調査で、ビタミンCやE(食物繊維も)を多くとる人のCDHの発生危険率が最も高かったというのです。ただし、CDHがあると診断されなかったグループでは、予想どおりビタミンC(A、βカロテン、食物繊維も)を多く摂取するほど、その発生危険率は低くなりました。条件によってはこれらビタミン類が必ずしも健康に好ましくない場合もあるらしいのです。


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