
活性酸素は細胞膜を標的にする
体のなかで活性酸素が発生したとき、最も標的になりやすいのが細胞の膜です。
細胞膜は、細胞の枠組みとして重要なばかりか、細胞を出入りする物質を管理したり、ホルモンに似た生理活性物質を生み出すなど、細胞の機能に大きく寄与しています。
全身を形づくっている約60兆の細胞の1つ1つが、私たちの生命活動の基盤を支えていることを考えれば、細胞膜の使命は大変重要です。
ところが、細胞膜はその大部分が酸化されやすい脂肪(多価不飽和脂肪酸)でできています。そのため、活性酸素の攻撃を受けると、膜が変性して細胞の機能が衰える他、活性酸素が細胞内の遺伝子(DNA)を直撃すれば、細胞ががん化する危険性もでてきます。
さらに、酸化された細胞膜は「過酸化脂質」という悪玉物質に変身し、今度は自ら近隣の細胞膜を連鎖的に酸化していきます。
そうした積み重ねが、生活習慣病の発生や、老化を進めていくのです。
ビタミンEとの比較実験
そこで近年、にわかに注目されはじめたのが、活性酸素の消去に役立つ「抗酸化成分」です。
抗酸化成分としては、カロテノイド類のほか、ビタミンEがよく知られていますが、アスタキサンチンの力はそれらをはるかに上回ります。
例えば、カロテノイド研究の第一人者である幹渉博士らが実施した動物(ラット)実験では、二価鉄によって誘発される肝臓細胞ミトコンドリアの脂質過酸化反応を抑えるアスタキサンチンのパワーは、ビタミンEの1000倍にのぼることが明らかにされています。
また、幹氏らの別の実験では、アスタキサンチン以外のカロテノイド(ベータカロテン、ルテインなど)の抗酸化力も調べていますが、アスタキサンチンのパワーは抜きん出ていたと報告されています。
この作用は専門的には「抗脂質過酸化作用」といいます。前述のように、細胞膜での「脂質過酸化」は生命活動に重大な悪影響を及ぼしますから、“スーパーカロテノイド”アスタキサンチンの「抗脂質過酸化」パワーが注目されるわけです。
本書では広義的に「抗酸化作用」と表現します。
一重項酸素に対して顕著な効果
ところで、活性酸素とひと口にいっても、さまざまな種類のものがあります(上段図)。このうち、アスタキサンチンは「一重項酸素」と呼ばれる活性酸素に対して、顕著なパワーを発揮することがわかっています。
これも、幹渉博士らの研究ですが、一重項酸素のみを発生させ、熱をかけずに光の影響もない環境を人工的に作って、一重項酸素に対する各種カロテノイドとビタミンEの抗酸化力を直接的に一重項酸素を測定することによって比較したところ、アスタキサンチンはベータカロテンの40倍、ビタミンEの550倍もの活性を示したのです。
アスタキサンチンの優位性
アスタキサンチンが、他の抗酸化成分にくらべて細胞膜で大きな効果(抗脂質過酸化)を発揮する秘密は、その構造にあります。
ベータカロテンは、細胞膜の脂溶性の部分でしか働けないのに対して、アスタキサンチンは細胞表面の水溶性の部分から、細胞質との境目の部分まで、細胞膜を縦貫した形で存在します。
そのため、アスタキサンチンは、より早い段階から、活性酸素の攻撃に対抗できるのです。アスタキサンチンの優位性はここにあります。
アスタキサンチンの力で、活性酸素をすみやかに消去できれば、細胞膜は本来のやわらかさに保たれ、体の根底から健康づくりが果たせます。
代表的な活性酸素の種類
◆スーパーオキシド 三大栄養素をエネルギーに変えるときに発生する活性酸素。 ◆過酸化水素 スーパーオキシドが、SOD酵素に分解された後に生まれる活性酸素。スーパーオキシドや金属元素と反応すると、ヒドロキシル・ラジカルが生まれる。 ◆ヒドロキシル・ラジカル 毒性が最も強い活性酸素で、ガンや生活習慣病、慢性疾患、老化の直接的要因となる。 ◆一重項酸素 毒性の強い活性酸素。紫外線を繰り返し浴びていると、皮膚の細胞中に大量に発生し、皮膚ガンを強力に促す。 |